そた@イギリス留学

大学生が9ヶ月間のイギリス留学で見たもの感じたことを書いていきます。

Brexit Part2

 どうも颯太です。なんか気づけば留学ももう残り3ヶ月くらいです。最近になって時間経つのはやいなーってめっちゃ感じます

 

よく言えばだいぶ生活に慣れてきましたが、同時に最初の頃の緊張感もなくしている気がします。気を引き締めて最後まで頑張らねばーーー!

 

このブログでは前回に引き続き今イギリスで1番ホットな話題、Brexit について話します。イギリスのEUからの離脱のことです

前回の記事で、EUの成り立ちだったり、EU「モノ・ヒト・資本・サービス」の自由化だったりの紹介をしました。それとEUにおけるイギリスにおける特殊性も大事なポイントです。ユーロを導入していなかったり、国境管理を自分でやっていたり、EUなんだけどちょっと距離を置いている...みたいな関係性を続けてきたわけです

 

そして前回の最後に書いたように、2016年のリファレンダム(国民投票)でなんと本当に離脱することが決まっちゃいましたってところで前回は終わりだったと思います。

ではその国民投票について話すところから。

実はこの国民投票、国際社会やイギリス世論は「残留」が勝つだろうと見込んでいました。世論調査などでは割と均衡していたものの、いざとなったらさすがにEU抜けることはないでしょみたいな雰囲気です

イギリスで街中で絶対に見かけるLadbrokes や William Hill といったブックメーカー企業、つまりいろんなレースやスポーツなどの行方に対して賭けを主催するみたいな会社も、この国民投票に関しては「残留」にはって多額の損失を出しています

 

それに当のイギリス政府も、前キャメロン首相、現在のメイ首相どちらもEU支持派であり、国民投票は残留の結果になることを願っていました。

じゃあ、そもそもなんで国民投票??

もちろん国民が求めれば行うという民主主義に基づいた判断ではあるんですが、もう少し複雑です

国民投票が決定されたのは2013年。当時、EUの経済危機や移民問題などでイギリス国民にはアンチEUの波が渦巻いていました

加えて、与党であったキャメロン首相率いる保守党はそこまで強力な体制を敷けておらず、反EU・反移民を掲げ国民感情を煽る独立党などが勢力を伸ばしつつありました

そこでキャメロン首相がとった秘策が「2016年のEU離脱についての国民投票です

とりあえずこの約束をしておくことで、国民の反EU感情をある程度鎮められるわけです

さらにもう1つ、この約束には条件が課されていました。それが「2015年の次期総選挙で保守党が勝利したら」というものです

つまりキャメロン首相の思惑としては、この国民投票の約束を、国民の鎮静化&保守党の政権維持のために使おうとしたわけです。もちろん、まさか国民は離脱を決めることはないだろうという計算のもとです

f:id:bokusota:20190215223739p:plain

文字ばかりになってきたので休憩。ちなみにこれが実際の投票用紙

そんなこんなですっかり予定の狂ってしまった政府は今、キャメロンの後任であるメイ首相のもと、Brexit について大変な状況にいるわけですが、何に苦労しているかというと、Deal を決めることです。つまり、どういう条件でイギリスがEUから抜けるのか、抜けた後の関係はどうするのか、そんな感じ

 

f:id:bokusota:20190217064147p:plain

あ、ちなみにこの左の男性がキャメロン前首相、右の女性がメイ現首相です

 

主に議論されているDeal として3つをここで紹介したいと思います。

それが、「Soft Brexit」「Hard Brexit」「No Deal Brexit」です。ここでちょっと言っておきたいのが、日本のBrexitに関する報道は必ずしも正しくないようです

あまり日本のニュースについていけていないのですが、たまに見かけるのが、「Hard Brexit」を合意なきEU離脱と捉えているもの。これは実は「No Deal」です。

いきなりなんのこっちゃって感じだと思うのでそれぞれ説明していきます

Soft Brexit

これは最もゆるーいタイプのBrexitで、離脱後もイギリスはEUの統一市場に残ることを意味します

イギリスは変わらず単一市場の恩恵を受けられるので、ヨーロッパ諸国に輸出するとき、またヨーロッパ諸国からモノを買うときには関税はかからず、企業や金融にとってはこれがベストです。

もう1つこの方法の良いところが、アイルランド問題を解決できる点。

アイルランド宗教的な違いの影響で、現在アイルランド共和国 (Repubic of Ireland)と北アイルランド(Northern Ireland)に分かれており、北アイルランドはイギリスの一部です。

国は違うとは言いつつ現在の両地域の間には国境管理が設けられておらず、自由に行き来できる状態です

f:id:bokusota:20190215231654p:plain

この看板を境にアイルランド北アイルランド(イギリス) が分かれています

では何が問題かというと、イギリスがEUを離脱したらどうなるか。そう、アイルランドという国はもちろんEUのままですが、イギリスの一部である北アイルランドEUから抜けることになります。そうなると、両者の間の行き来はどうなるんだってことです

多くの人がこの境を行き来して仕事に行ったり、家族がいたりしているので、国境管理などができると非常に困ります

その点、Soft Brexit だとイギリスはEUの単一市場に止まり、ヒトの制限も強力にはならないため、アイルランドの国境はこのままでよく、特に問題は生まれません

 

しかしこの場合、そもそもイギリスが望んでいたヒトの移動の制限はできなくなるし、他の国と個別に貿易協定を結ぶことはできないなど、正直「あんまり変わんないじゃん」という印象です

しかも、EUを離脱する以上イギリスはこれ以上EUの政治体制に関われないのに、EUに対する負担金の残りが手切れ金となってイギリスにのしかかります。これはおよそ500億ユーロとも言われており、日本円にすると約6兆5000億円😇

離脱し、政策過程に参加できないのにも関わらず今後このお金を払い続けていかなくてはならないわけです

EUという大きな市場に留まれるという経済的安心は大きいので、メイ首相や企業、金融業界などはこのSoft Brexit を支持していますが、この「ゆるーく抜けるけどほぼ現状維持」みたいな策が反EU・反移民派の人々を満足させられるはずもなく、なかなか難しい状況です。

Hard Brexit

おつぎはこちら、Hard Brexit。名前からしてソフトよりも強力な感じです。これは、2020年末頃と予定されている「移行期間」(離脱までの準備体操みたいな)まではイギリスがEUの単一市場・関税同盟など現状のままの体制を維持し、その移行期間が終わるときっぱりとEUを抜けるというもの。

移行期間後は、イギリスは自国の意思で各国と貿易協定などを結ぶことができ、EUからのヒトの移動も制限できるようになるし、EUの裁判所に縛られることなくイギリスという国としての自治は確実なものになると言えます。

しかもソフトの場合と違いこの場合には若干のお金を除き基本的に手切れ金に当たるようなものは払わない仕組みになっています。

と聞くと、いいじゃんこれ!ってなるかもですが、非常にリスクの高い策です。

そもそも、一体どうやってアイルランドの国境間における解決策を見つけるのかは非常に不透明です

 

正直、イギリスがEUから抜けて各国と貿易や関税について交渉するといっても、世界はすごくネガティブです。EUという巨大経済圏を抜け誰もわからない未知の方向へと進む国と積極的に貿易したいとはなかなか思わず、孤立してしまったイギリスは弱い立場となって不利益な協定をのまされる可能性も大きいです。

例えば当時のアメリカのオバマ大統領も、「もし離脱すればイギリスはアメリカとの貿易交渉に関して最後尾に並ぶことになる」と発言しています。

ただしトランプ大統領Brexitに肯定的で、今後両国の関係が接近することはあり得ますがEUという強力なグループを抜けて独自の道を歩む危険性は計り知れません。

 

先ほども言ったように、メイ首相はSOft Brexitを支持していますが、実際のところ他の内閣の大臣の多くはHard Brexitを支持しているし、反EU・反移民を抱いている議員は党派を超えて多数いるため、なかなか難しいところです。

No Deal Brexit 

さて最後にこのNo Deal Brexit。言葉通り、EU離脱についてのソフトやハードどころかなんのと取り決めもしないままイギリスが予定されている今年3月29日(延期の可能性はあり)にEUを抜けるというものです。

これはよく「最悪のシナリオ」とも呼ばれるもので、結末としてはHard Brexit とほぼ同じかもしれませんが「移行期間」なんていうものがないので、いきなりイギリスはEUというグループから抜けて宙ぶらりんのような状態に陥りかねません。

貿易や関税についての体制を一から自分で整えなくてはならず、先ほど言ったようにそれほどイギリスに対し親身になってはくれなさそうなこの国際情勢の中では、その体制構築にどのくらいの労力・時間がかかるか未知数です。

なので、「もしこれが起こればスーパーから食材がなくなり、薬局から薬がなくなる」とも言われています。本当にそんなことが起ころうもんならその頃はまだこっちにいる僕はたまったもんじゃありません。笑

 それにこの場合アイルランド問題への解決策を見出す時間もないため、国境間に管理体制のようなものが敷かれてしまうことになり、人々からの反発は免れません。

いくらイギリスが望んでいた「自国よる管理」というものが様々な面で叶うとしても、いきなりパッとEUと手を切るこの策はイギリスの経済や法律をパニックさせる可能性も高く、言ってみればSoftにもHardにもそれ以外にも、どうしても取り決めが決められなかった場合の結末です

 

いやいや何も決められないとかはさすがに...って思いますよね。

でもそうとも言えないんです。メイ首相をはじめ本当に毎日のようにイギリスのエリートたちがこぞって解決策を議論し続けていますが、なかなか取り決めは決めれていないままもう2月中旬です。予定されているBrexitは3月末。

ソフトにしたってハードにしたって、すべての人を満足させることは不可能だし、変にEUとの交渉に焦って不利な条件でいってしまったらそれこそ大英帝国という国がとんでもないことになりかねません。本当に難しいと思います。

 

ちなみに、下にこれら3つのDealを観点ごとにまとめた表を載せておくので参考までに!

f:id:bokusota:20190216223908j:plain

https://zai.diamond.jp/articles/-/298432

 

そんなこんなで本当にごちゃごちゃなBrexitですが、正直いって僕はまだ賛成派の人に出会ったことはほとんど全くと言っていいほどありません。周りの人もそうだし、街中なんかで見かけるものでも、基本的にEUから抜けるなんて絶対にダメなことになると言っている人ばかりでした。

※ここで言っておかねくてはならないのが、僕がなかなか出会えていないだけで賛成派も多くいることです。僕が住んでいるスコットランドは、地域別で見ると2016年の国民投票において残留派が離脱派を上回っていました。これはまあ、イギリスから独立してEUに残りたいみたいな、スコットランド独自の背景があるのですがそれはそれで深い話なのでまた今度。

それに、基本的に Brexit賛成派:地方都市者・高齢層・低学歴層(決して批判的な意味ではなく、大学に行っていない階層を表す言葉が見つからなかっただけです。)

Brexit反対派:大都市・若者層・大学出身層などという分け方がよく言われており、スコットランドの首都で大学生をやっている僕は当然賛成派の人と接する機会が少ないのは当然です。

 

じゃあもう一回国民投票すれば??? 

まあそうなりますよね。笑 おそらくですが、もう一回国民投票したら残留派が勝つんじゃないかと思います。離脱が決まってからというもの、泥沼の交渉が続くにつれていかにEU離脱が大変なことなのか国民もしっかりと認識したように感じます。

でも正直、2度目の国民投票の可能性は限りなく低いです。

なぜかというと、それをしちゃったらもう何でもありになってしまうから。離脱派が勝ち、残留派が増えたからってもう一回国民投票して残留となったら、どうなるでしょう。当然、離脱派は「じゃあもう一回しろ!」ってなりますよね。一回やり直して覆してるんだから、断れず、これが繰り返されていきます。終わりがない。笑

 

そもそも実は2016年の国民投票には法的拘束力がないため政府は単純に民意を無視してEUに残ることもできるのですが、それをしてしまうとイギリスの民主主義という基本原理が揺るぎかねません。

 

そんなこんなで、こうしている今現在もイギリスはどうやってBrexitという前代未聞の大仕事をやってのけるのか奮闘中なわけです

 

今回はこれで終わりますが、これからも情勢が動いて何か書きたいことができ次第また更新しようと思います!

複雑な内容になってしまいすみません

ありがとうございました〜!!! 😌