イギリスの政治制度
こんちわ〜
テストに悲鳴をあげつつ留学生活の最後を存分に楽しんでます
帰りたくない気持ちもあるけど日本に帰ってやりたいこと会いたい人もいっぱいなのでそれはそれで楽しみ😌
今日のブログは、いつか書きたいなと思っていたこと、イギリスの政治について書きたいと思います!
僕は日本の大学では法学部で、法律とか政治とかを主に学んでます
エディンバラ大学でも国際法とか開発学などなどを勉強したんですが、せっかくイギリスで留学しているならイギリスの法制度・政治について学びたいなと思い、イギリス政治の授業も履修しました
イギリス政治の歴史から政党、選挙制度や議会の仕組み、さらにはいま話題のBrexitに至るまで幅広く学ぶ感じの授業でした
先日その授業の試験があり、どうかな〜って感じの出来ではあったのですが、以前よりも少しはイギリスの政治について話せるようになったと思うので紹介しようと思います
政治や法制度って食文化や観光スポットなどと違ってなかなか海外の人には注目されにくいポイントだと思いますが、国という存在そのものに根本的に関わってくるすごく大事な国の特徴だなと改めて感じたので、自分の復習のためにも!
この言葉、皆さん聞いたことありますか? 現代社会かなにかの授業でちょっとだけ触れた記憶もありますが、あんまり馴染みのない言葉ですよね
一言で言うと、イギリスには憲法がありません。
みたいな書き方をするとすごい誤解を生んでしまうので訂正しておきますが、憲法典として成文化された単一の規定がありません
これはどういうことかと言うと、日本には「日本国憲法」と名のついた文書があって、その内容がしっかりと憲法という1つの文書に書き記されています
だからこそ、僕は大学で「日本国憲法〜条はこういう意味で…」とかやってるわけです
しかしイギリスには、「イギリス国憲法」みたいな文書は存在しません
代わりに、議会の制定法や裁判所の判例、慣習や国際条約などの中で国家の性質を規定するようなものたちが「憲法」のようなものとして認識されています
ちなみに、僕の記憶が正しければ学校で「イギリスは不文憲法で…」みたいな感じで習った気がしますが、すごく厳密に言うとちょっと違います。
不文憲法は憲法的性格を持つ規定が法律やその他の文書に一切書かれていないシステムのことなのですが、イギリスは「憲法」という単一の文書を持っていないだけで、憲法とされる重要なルールはほとんど全て法律や決議内容として明文化されています
なので非成文憲法という方が正しいです。
こっちで履修した授業でも、Unwritten (不文のこと)よりも Uncodified (成典化されていないこと) と表現した方が良いと習いました
ここで自然な疑問として、「なんで成文憲法持たないの?」と思うかもしれません。下の図(赤: 非成分) で明らかにわかるように、世界的には圧倒的に成文憲法の国の方が多い状況です。
ではなぜイギリスに成文憲法がないのか
それは単純に、「作るタイミング」や「作る必要性」があまりなかったからです。
主に憲法典は国家の一大事や大きな変革があった際に作られてきました。例えばアメリカは国が独立した際、日本は近代国家として歩みを始めた明治時代と敗戦後天皇制から国民主権へと移行する際に憲法が作られました。
しかしイギリスは、名誉革命など大きな革命はあったものの、国家間の争いという意味ではどこの国からも統治を受けたことはなく、よって近代国家として成立してからというもの、大きな変革はなく大英帝国として存在してきました。
その歴史の中で積み重なってきた慣習やルールが現在の憲法に規律となって存在してきたため、特別に憲法という単一の文書を作ることがなかったのです
そしてそして、そんな非成典という性質を持つ憲法が、イギリスのとても特徴的な政治体系を生み出しています。見ていきましょう!!
議会主権 (Parliamentary Sovereignty)
この原理はイギリスの憲法的原理の中でもっとも重要なものと言ってよいかもしれません。
イギリスは立憲君主国で、現在でも女王であるエリザベス女王が国の君主として君臨しています。原理としては、国の主権は「議会の中の国王または女王」(King-in-Parliament, Queen-in-Parliament) にあります。国王の主権といっても、「君臨すれども統治せず」という立憲君主制の原理にあるように、実際には国王は政治的に中立であることが求められ、日本の天皇と同じように国の政治に関わることは基本的にありません
代わりに、議会つまり立法府が絶対的な主権を持ち、他のどんな機関よりも上位に位置づけらレます。
議会は最高権力としてこれまでのどんな法律も改廃することができます
ここですごいのが、イギリスの憲法がたくさんの法律などの集まりから構成されているという特徴により、議会は憲法でさえも議会の意思で改廃されてしまいかねないということです。
日本では日本国憲法が他の法律よりも上位に位置づけられ、議会は法律は改廃することができますが憲法に関しては最終的には国民投票が必要であるなど、特別なプロセスを踏まねいといけません。
しかしイギリスでは、理論上、他の普通の法律と同じように議会が憲法でさえも改廃してしまえるのです。
この議会主権は三権分立と対比することができます。三権分立とはなんぞやというと、国の主権を担う機関のうち立法府つまり国会、行政府つまり内閣、司法府つまり裁判所の3つの権力を分立し平等な地位に置くことによってお互いがお互いを抑制しあって暴走を防ぐことを狙いとしたシステムのことです。
上の図にあるように、国会・内閣・裁判所がそれぞれ互いに相手に対する役割を持っており力の均衡を保っています。
この中でもイギリス政治と絡めて特筆すべきは違憲立法審査権です
これは裁判所が国会に対して持っている役割で、国会によって成立された法律などが憲法に違反してないかどうか裁判所が審査する制度です。違反していると判断した場合には当該法律を無効にすることができます。
つまりこの制度は「憲法の法律に対する優位性」と「立法府と司法府の平等」を表していると言えます
この制度はもともとアメリカで発展したもので、西欧諸国をはじめ多くの国で重要原理となっているのですが、ではイギリスではどうなるか
これまで見てきたように、イギリスでは、「憲法の優位性」も「立法府と司法府の平等」も当てはまりません
憲法とされるものは他の法律と地位が違うわけではないし、立法府は主権として他の機関よりも上位です。つまり、イギリスには法律が違反しているかどうかを判断する対象の「優位な憲法」の存在がないし、それを判断する権力のある機関もありません。
イギリスの裁判所は、国会が作った法律に真っ向から反対することはできず、なんとかうまく解釈して対処するしかないみたいな、非常に司法統制の弱い状態でした。
あえて「でした」と過去形で書いたのは、この状況が少し変わってきているからです。
現在絶賛大問題中のBrexit、つまりイギリスのEU離脱問題ですが、そのEUは人権保護に非常に重きを置いており、長年イギリスに対してその取り組みを要請してきました
しかしもしも裁判所に国会の作った法律を審査し無効にする権限を与えてしまうと、イギリスの根本的原理である国会主権が揺らいでしまいます。
そこで制定された法律が、1998年のHuman Rights Act (人権法)です。この法律は、EU法の中でも中心的役割を果たしているヨーロッパ人権条約 (European Convention on Human Rights) に規定されている権利をイギリス国民が主張する際に、わざわざフランスのストラスブールにあるEUの裁判所に行かずともイギリス国内裁判所で主張することを認めたものです。
そしてもう1つこの法律の重要な点は、イギリスの裁判所に対し、議会の制定する法律が先述したヨーロッパ人権法に違反していないかを審査し、している場合は不適合であるという宣言をすることを認めた点です。議会主権という原理を保つために裁判所は法的には不適合な法律を無効にすることはできませんが、政治的に議会が裁判所の判断を全く無視することは考えにくく、イギリスの主権原理を維持しながらも人権保護への取り組みが進みました
このように、イギリスは非成文憲法という非常に特徴的な憲法システムを持っており、それによって議会主権という政治体制が確立されました。しかしEUや国民からの要請によって議会の主権は大きなプレッシャーを受けるようになっています。人権法の制定などによって議会主権の維持と人権の保護の両立を目指していますが、今後どうなっていくのかは不透明です
という感じで今回はイギリスの法・政治制度について話してみました!
なるべくわかりやすいように頑張ったつもりなのですがちょっと複雑な内容もあったかもしれません
最後まで読んで頂いてありがとうございました!!
ではでは〜